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<鎮咳薬(咳止め)>

咳が出てお医者さんにかかると、いろいろな薬の中に咳止めが入っていると思います。

咳止めは単に咳を止めるためのお薬ですので、病気を治すものではありません。咳が出ている原因を診断し、原因治療とともに飲むようにしましょう。

原因治療をすると咳も良くなりますので、疾患によっては抗生剤、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、ステロイドホルモン剤、去痰薬なども広い意味では鎮咳剤と言えますが、狭い意味での鎮咳剤は中枢性麻薬性あるいは非麻薬性鎮咳薬だけです。

中枢性麻薬性鎮咳薬にはコデインリン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩が有ります。副作用としては、麻薬性ですので、依存性、眠気、便秘、腸閉塞、呼吸抑制、悪心、嘔吐などが有り、注意が必要です。自動車を運転するときなどは内服を控えたほうがよろしいかと思います。

中枢性非麻薬性鎮咳薬にはたくさんの薬剤があります。代表的なものとしてはアスベリン、メジコン、アストミン、レスプレン、フラベリック、コルドリンなどです。副作用としてはめまい、口渇、眠気などが有ります。緑内障が増悪する方もいらっしゃいます。

さらに注意が必要なお薬としては、麻薬性鎮咳薬にいろいろな成分を配合したお薬があります。シロップなどで出ることがあるお薬の中で、①ブロチンコデイン、②セキコデ、③フスコデなどが有ります。①にはコデインリン酸塩、②と③にはジヒドロコデインリン酸塩が入っています。②と③にはエフェドリンという気管支拡張作用のある薬品も含まれていて、時に不整脈や動悸といった副作用が出ることがあります。また、③には古い抗ヒスタミン剤(アレルギーの薬)も含まれていますので、眠気がさらに強くなることも考えられます。

咳止めと称して、ホクナリンテープ(セキナリンテープ、ツロブテロールテープというジェネリック医薬品が出ているかもしれません)が処方されることがあるかもしれません。ホクナリンはβ刺激薬という気管支拡張剤で、気管支喘息や気管支炎、肺気腫などの治療に使用されるお薬で、上気道炎には適応がありません。明らかな上気道症状に伴う咳に対して処方するのは間違いで、貼付したからと言って咳は止まりません。処方する側もしっかりと鑑別診断をしてから処方すべきだと思います。