<かぜ(急性上気道炎)>
皆さんはかぜをひいた時にどうしますか。
ゆっくり休んで、自分で治す方。薬局で市販薬を買ってきて飲む方。お医者さんを受診して薬をもらってくる方(過去にもらってあった薬を飲む方)。
さて、どれが一番いいのでしょうか。ーーーー実際には、どの方法でも間違っていません。
2003年に日本呼吸器学会から「成人気道感染症診療の基本的考え方」というガイドラインが出されていますので、ご紹介します。
一般に、いわゆる「かぜ」のことを医学的には急性上気道感染症といいます。この急性上気道感染症の原因微生物はウィルスが最も多く、全体の80~90%を占めます。
ウィルス感染の主症状は鼻症状(鼻水、鼻づまり)や咽喉頭症状(咽頭痛、咳)、微熱などです。
軽症の場合は自宅療養で3~7日くらいで自然治癒します。
一部の患者さんはいわゆる「かぜ薬」を服用されると思います。
一部の患者さんは医師による診断・治療を希望するか、あるいは重大な疾患ではないことを確認してもらうために診療所を訪れます。多くの医師は来院した患者さんに対して抗菌薬を投与しています。しかし、このガイドラインを読んで勉強されている先生や感染症の専門医は、このウィルス感染症に対する抗菌薬の処方こそが耐性菌増加の原因となっていると考えていますので、抗生剤を処方しません‼
大切なのは、かぜは自然治癒するもので、「かぜ薬でウィルス感染そのものを治すものではない」ことを理解することです。
1)かぜの自然経過は5~14日間ですが、一般には3~7日間で軽快するものです
2)ほとんどがウィルス感染で、様々なウィルスが関係します。
3)かぜの原因ウィルスに対応する抗ウィルス薬は存在しません。
4)抗生物質は「かぜ」に直接効くものではありません。
5)抗生物質を頻用すると副作用(下痢やアレルギーなど)や耐性菌の出現がみられます
6)いわゆるかぜ薬は、症状を緩和することを目的として用います。
7)多くのかぜ薬は連用すると副作用がみられます。
8)発熱は体がウィルスと戦っている免疫反応です。発熱によってウィルスが増殖しにくい環境条件が作られています。解熱鎮痛剤は発熱や痛みなどの症状が激しいときにのみ頓用で使用すべきで、頻用すべきではありません。
9)症状が持続(4日以上)続く場合や悪化傾向のある場合にはかぜ以外の疾患の可能性もありますので医師の診断が必要です。
10)うがい、手洗いは重要です。水道水や食塩水には殺ウィルス作用はみられません。うがい薬として明確な殺ウィルス効果が認められるポビドンヨード(イソジン)を用いるのが望ましいです。
診療所を受診した際に消炎鎮痛剤、抗生物質、鎮咳剤、去痰剤に加え、胃薬、解熱鎮痛剤、漢方薬など5種類も6種類もの薬をもらってくる患者さんがいらっしゃいます。これは医療者側にも問題があります。風邪に対する治療薬は対症療法ですので、症状に合わせて必要なものを必要な量だけ出すべきだと思います。
上記に記載したように、特に抗生物質は感染初期には必要ありません。細菌感染が疑われたときのみ使用すべきです。抗生物質にもいろいろな種類がありますが、一般の診療所でよく出されている経口のセフェム系抗生物質は気道への組織移行が低く、耐性菌も多いことから処方は控えるべきだと考えられています。気道への組織移行などを考えた場合にまずはマクロライド系、テトラサイクリン系の抗生物質を、これらの効果が有効ではない場合、あるいは重度の感染が疑われる場合にはニューキノロン系の抗生物質を使用します。抗生物質は適量を短期間使用するのが基本です。少量を長期に使用することは耐性菌の発生を助長します。
一度、もらった薬を調べてみてはいかがでしょうか。
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