<睡眠薬>
皆さん、最近暑い日が多いですね。雨も多くて、湿度も高く蒸し暑くて寝苦しい時も有ります。
眠れない、という事と、睡眠障害、不眠症とは違います。
先進国では5人にひとりが不眠症に悩んでいると言われます。
不眠症と言ってもその中には、うつ病や統合失調症、不安障害と言った精神疾患が基礎になっている場合もあります。また、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome : SAS)、むずむず脚症候群(Restless Legs Syndrome : RLS)、周期性四肢運動障害(Periodic Limb Movement Disorder : PLMD)などが原因の場合もあります。
ひとくちに不眠症といっても基礎疾患がある場合、その疾患に対する治療を行うことが必要で、漫然と睡眠導入薬を連用することは治療上好ましくありません。
高齢者の場合前立腺肥大症や過活動膀胱が原因となっている場合も少なくありませんので、その場合は泌尿器科での治療が必要となります。
これらの基礎疾患が除外できたうえで、不眠症の治療になります。
10年ほど前に厚生労働省から「睡眠障害対処の12の指針」(平成13年度 厚生労働省研究班報告)というものが出されました。
- 睡眠時間はひとそれぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
- 刺激物を避け、寝る前には自分なりのリラックス法
- 眠たくなってから床に就く、就寝時間にこだわりすぎない
- 同じ時刻に毎日起床
- 光の利用でよい睡眠
- 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
- 昼寝をするなら、15時(午後3時)前の20~30分
- 眠りが浅いときは、むしろ遅寝、早起きに
- 睡眠中の激しいいびき・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
- 十分眠っても、日中の眠気が強い時は専門医に
- 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
- 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
治療や療養に関して
現在、睡眠薬としてもっとも一般的に処方されているのはベンゾジアゼピン(BZD)受容体に作用するBZD系睡眠薬です。
BZD系睡眠薬(デパス、ソラナックス、セルシン、メイラックス、レスタス、ハルシオン、マイスリー等々)は文字通りベンゾジアゼピン骨格を有する化合物の総称で、抑制性神経伝達物質γ-アミノ酪酸(GABA)のGABA受容体に結合することでGABAの作用を高めます。BZD系睡眠薬の副作用としては、一時的な健忘、夜間異常行動、依存形成などがあります。
高齢者ではその副作用である筋弛緩作用のため、夜間にトイレに行こうとした際、ふらついて転倒する危険度が高まります。
睡眠そのものが,血中炭酸ガス濃度変化と血中酸素濃度変化への反応を抑制し,上気道を虚脱・閉塞させることから,睡眠薬により睡眠呼吸障害や慢性閉塞性肺疾患(COPD)を悪化させる可能性があります。特に、慢性呼吸不全や低酸素血症、高炭酸ガス血症をきたす可能性のある方に対する睡眠薬投与は禁忌です。
また、睡眠薬投与により認知症状が出現したとの報告も有ります。
以上のように睡眠薬投与による合併症が有るため、特に呼吸器疾患で通院されている患者さんが多い当院では睡眠薬、睡眠導入剤の投与は原則としておこないません。
睡眠障害などの診断が必要で、投薬をご希望の方は神経科・神経内科・心療内科などの受診をお勧めします。
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