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<蜂毒によるアナフィラキシー>

これから蜂がたくさん飛ぶ季節がやって来ます。お問い合わせも多々ありますので、下記をお読みいただけると少し理解が深まるかと思います。 

蜂は巣を守るために外敵に向かっていく習性があります。人を刺す習性があるのは、スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチの3種類です。

 多くの人の場合、刺し傷や、その周辺の痛み、腫れ、赤み(局所反応といいます)以上のものを引き起こすことはありません。これはアレルギーの無い方にも起こる反応であり、数日程度で消えていきますので、心配ありません。

 しかし、蜂毒に対するアレルギーがある一部の人では全身反応という、ずっと重度で危険な反応が起こります。

厚生労働省の調査によると、日本では蜂刺されによるアナフィラキシーショックで年間15人前後が亡くなっており、その多くは40歳以上の男性でした。

 不幸にも蜂に刺された場合には全身のアレルギー反応が出ているかどうか確認してください。

全身アレルギー反応の兆候

通常、症状は非常に素早く発現し、以下を含みます。

  • 不安感、ピリピリ感、および浮動性めまい
  • 全身のかゆみおよびじんましん
  • 唇や舌の腫れ
  • 喘鳴および呼吸困難
  • 虚脱および意識消失

 蜂毒に特有なのは反応時間が早い点で、蜂に刺されてからその多くは約15分以内には症状が出てきます。症状が早くあらわれるほど重症になることが多く、場合によってはアナフィラキシーショックを起こします。

さらに、アナフィラキシーの症状が出てから心停止までの時間は15分という報告があり、速やかな治療が必要です。

医療機関から離れた山間部などで蜂刺されにあった場合は、救急車の到着までに時間がかかることが多く、アナフィラキシーショックにより命を落とすリスクがさらに高まるため、対策が重要となります。

 過去に全身アレルギー反応を起こしたことのある人は、もう1度刺されると、また反応が起こる可能性が非常に高いと言われています。

ところが、過去に刺された時にアレルギー反応が全くなかった人でも、次に刺された時に全身アレルギー反応を示すこともあります。幸い、この最初の反応で死に至る可能性はあまり高くありません

 アレルギーがあることが分かっている人は、常にエピネフリン自己注射器が使えるようにしておくことで、命を落とすリスクが低くなります。自己注射器は、皮膚に押し当てて自分に注射をする携帯型の機器で、「注射の仕方」を知っている必要はありません。エピネフリン(アドレナリン)はアレルギー反応を治療する薬であり、命を救うことがあります。アレルギー反応の最初の兆候が現れた時に自己注射器を使用してください。

 局所反応(強い痛みやより広範囲の腫れ)の重症度が高いことや刺された回数が多いことは、全身反応のリスク増加の指標とはならないことを知っておいてください。

また、血液検査ではミツバチ、アシナガバチ、スズメバチに対して抗体(特異的IgE抗体)を持っているかがわかります。ただし、特異的IgE抗体価は、症状の発現率とは関連しますが、その症状の重篤度とは必ずしも相関しないため、アナフィラキシーショックを起こす目安にはなりません

エピネフリン自己注射器は過去に蜂に刺されたことにより全身性の反応が出た既往が有り、今後も蜂刺されの可能性の高い方には保険適応が有ります。しかし、たとえ抗体価が高かったとしても過去に全身反応の既往が無く、今後蜂刺されなどの危険性が無い場合に処方をご希望の場合は自費となります。

アナフィラキシーを起こす可能性があるかどうかは、病歴、既往、抗体価など、総合的に判断する必要があります。

 全身アレルギー反応の兆候がない場合、次の3つの手順に従ってください。

毎年たくさんの方がハチに刺されて救急科を受診しています。そのような受診の多くが、以下の手順に従うことにより、家庭で治療することができる局所反応によるものです。

1.鋭くないもので毒針を取り除きます。

ミツバチの刺し傷とスズメバチの刺し傷はよく似ていますが、大きなちがいが1つあります。ミツバチに刺された場合、かかり(逆とげ)の付いた針が残されています(そしてミツバチは死にます)。一方でスズメバチの針はなめらかで、身体から離れず、何度も刺すことができます。 

ミツバチに刺されたら、出来るだけ早く針を取り除く必要があります。多くの場合、ハチも毒袋を残していくため、取り除かない限りは毒を送り込み続けます。そのため、取り除くのが早ければ早いほど、毒の流入を早く止めることができます。

クレジットカードやバターナイフなど、切れにくいもので患部を優しくこすってそぎとることが、針を取り除く最善の方法です。ピンセットなどは毒袋に穴をあけたり押しつぶしたりして、症状を悪化させる可能性があるため避けた方がよいでしょう。

2.冷湿布をする

針が取り除けたら、冷湿布で痛みを和らげることができます(氷で全体を浸すことはしないでください)。経口投与の抗ヒスタミン薬やクリーム剤でかゆみと腫れを和らげることができます。

3. 患部を持ち上げる

刺し傷の部位によっては、部位の位置を高くすることで腫れを和らげることもできます。

多くの場合、刺し傷による腫れはびっくりするほど大きくなります。手を刺されると、普段の2倍にまで腫れることもあります。温かく柔らかく感じる部位を伴うこの腫れは、蜂巣炎という感染症と見分けが付かないこともあります。刺された後、特に最初の数日以内に感染が発現することはめったにないことを、覚えておいてください。局所反応による腫れは数時間で引くことがありますが、完全に回復するには数日かかることがあります。

 ハチ刺されを防ぐカギ

ハチ刺されによる合併症を防ぐ最善の方法は、そもそも刺されないようにすることです。ミツバチやスズメバチの回りにいるときにあなたやあなたの子供が外出する場合、覚えておくべきことがいくつかあります。

  • 鮮やかな色の服、香水や香りのするヘアスプレーは避けること。
  • ミツバチやスズメバチは社会的な生物であることを覚えておくこと。ハチが人を刺すのは、自分たちの巣を守るために必要な場合だけです。昔からある経験則、つまり「相手の邪魔をしなければ、邪魔されない」は真実です。
  • ミツバチとスズメバチは非常にゆっくり飛ぶので、ほとんどの人は、素早く歩くだけで逃げることができます。

 10月くらいまではまだまだ蜂の活動期です。最近は街の中でもスズメバチがみられることが有りますので、皆さん気を付けて行動してください。