<風疹の流行>
昨日国立感染症研究所から「首都圏における風疹急増に関する緊急情報:2018年9月12日現在」という報告が有りました。
それによると、今年第36週までの風疹患者累積報告数は496人で、現時点で2008年以降3番目に多い数だそうです。2013年には年間14344人の患者さんの報告があり、この流行に関連した先天性風疹症候群が45人確認されています。
平成26年3月に厚生労働省から「風しんに関する特定感染症予防指針」というものが発表され、早期に先天性風疹症候群の発生をなくすとともに、平成32年度までに風疹の排除を達成することを目標としていました。
2013年の大流行以降昨年までは319人、163人、126人、93人と減少傾向で、今年も第20週(5月14日の週)の11人を除き、第29週までは1週間当たり0~7人の範囲でしたが、第30週以降急増しています。東京都、千葉県からの報告が多く、神奈川県、埼玉県からの報告が増加傾向にあります。第36週(9月3日の週)には私たちの長野県からも5人の報告が有りました。
患者報告の94%(468人)が大人で、男性が女性の4.2倍多く報告されています。特に30~40代の男性に多く報告があります。
2017年度の調査結果を見ると、成人男性は30代後半(84%)、40代(77~82%)、50代前半(76%)で抗体保有率が低いと報告されています。
日本において風疹ワクチンは1977年8月から1995年3月まで中学生の女子のみが定期接種の対象でした。1989年4月から1993年4月までは、麻疹ワクチンの定期接種の際に、麻疹おたふくかぜ風疹混合(MMR) ワクチンを選択しても良いことになっていました。当時の定期接種対象年齢は生後12カ月以上72カ月未満の男女でした。1995年4月からは生後12カ月以上90カ月未満の男女に変更になり、経過措置として12歳以上16歳未満の中学生男女についても定期接種の対象とされました。
2001年11月から2003年9月までの期間に限って1979年4月から1987年10月生まれの男女はいつでも定期接種として受けられる制度に変更になりました。
2006年度から麻疹風疹混合(MR)ワクチンが定期接種に導入され、1歳と小学校入学前の1年間の幼児の2回接種となり、2008~2012年度の時限措置として、中学1年生あるいは高校3年生相当年齢を対象に2回目の定期接種が原則MRワクチンで施行されました。
平成30年9月1日現在で、39歳5カ月以上の男性と、56歳5カ月以上の女性は定期接種の機会がありませんでした。また、30歳11カ月から39歳5カ月までの人は中学生の時に医療機関で個別接種出来ましたが、受けていない場合もあります。
これらのワクチン政策の結果、近年の風疹患者の中心は小児から成人へと変化しています。
妊娠20週頃までの女性が風疹ウィルスに感染すると胎児にも風疹ウィルスが感染して、眼、耳、心臓に障害を持つ先生性風疹症候群の児が生まれる可能性があります。妊娠中は風疹含有ワクチンの接種は受けられません。また、受けた後は2カ月間妊娠を避ける必要があります。女性は妊娠前に風疹含有ワクチンを受けておくことが推奨されています。
血液検査で風疹抗体価の測定ができます。検査は保険が使えませんので自費診療となり、当院では7000円程度の費用と消費税が掛かります。
現在風疹単体ワクチンは手に入りません。MRワクチンは今のところ何とか入手できますが、小児の定期接種を優先におこなっていますので、成人の方で接種ご希望の方はお電話にてご相談ください。やはり保険は使えませんので、9000円程度の接種費用が掛かります。
この流行もいつまで続くかわかりませんが、もう少し経過を見ていく必要があると思います。
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